第8 その他の小ネタ
1 「民弁スピリット」は不要
(1)無理筋は書かず,主戦場に力を注ぐこと
無理筋でも主張を通す「民弁スピリット」は不要。
無理筋で頑張るのは,印象が悪い。ある程度合理的な筋で論証する。
たとえば,「黙示の承諾」なんてのは,無理筋。それよりも,「背信性不存在」とかのほうが,よっぽど合理的。こちらが主戦場なので,そちらに重点を置く。
(2)主戦場判断の難しさ対策
ただし,主戦場を的確に判断するのは,けっこう難しい。
ア 主戦場判断の基本的な作戦
主戦場判断の基本的な作戦としては,具体的な代理人(甲野太郎とか)の立場に立ってみること。
code:具体的には、
ⅰ 主張書面をよく読むこと。
ⅱ 起案者がなりきるべき代理人の尋問事項を虚心に眺めること。
イ 基本戦略が通じない場合とその対策
(ア)しかし,新61期A班第2回起案だと,主張書面はないし,代理人は尋問で黙示の承諾っぽいことを聞いている。こういう場合は,どう判断していいか,よくわからない。
(イ)そこで,落ちない起案という戦略上,保険をかけて,戦線の拡大を余儀なくされることも多い。
ウ 保険的戦線拡大の際の注意点
そこで,その場合どうするか。
多くの場合,主戦場っぽいところと,保険的な無理筋の戦線との間で,争点が実質的に共通する。(別の観点から言えば,争点が全く共通しない戦線の場合は,主戦場判断の基本的作戦の②から,主戦場ではない,との判断が可能。それと関連するようなことを尋問で聞いているから,ここも戦線なのかなあ,という疑念が生じる。)
このときは,主戦場っぽいところをを先に論じた上で,保険戦線では,主戦場での論述を引用するとよい。そうすれば,省エネで保険をかけつつ,主戦場っぽいところの点も落とさないことになる。
なお,引用の仕方は,後記3参照。
エ 無理筋主張のリスク
ただし,よほどの無理筋を論じてしまうと,場合によっては,減点対象らしいです(25組からのうわさ)。要注意。
2 不利な点から逃げない
(1)原則
自分の側にとって不利な点に目をつぶることは,許されない。
不利な点については,何らかのフォローをするべき。そのフォローが,へりくつであっても,しないよりは,ずっとまし。
(2)具体例
例えば,処分証書や重要な書証が存在しており,それが自分にとって不利な場合,何らかのへりくつを考え出さないといけない。何でそんな書面が存在しているのか,など。
このときは,へりくつ内容のよしあし以上に,へりくつをこねたことが大切(なんだと思う。たぶん。私見。)。
やってはいけないのは,自分のへりくつのへボサにうんざりして,へりくつをこねることをやめてしまいたくなり,へりくつをこねることを回避するため,その書証を見なかったことにしてしまうこと。これをすると,かなりのダメージとなる(ような気がする。)。
(3)前記1「民弁スピリット不要」との関係
この点と,前記1の民弁スピリットが不要である点は,紛らわしいのだけれど,区別は可能なはず(私見)。
3 「前述の通り」はNG
同じ内容を複数箇所で繰り返して論述する必要があるときの引用方法は,「前述の通り」では不十分。
具体的な項目番号を指摘する必要がある。例えば,,「第3 2(1)で論じたとおり」など。
「前述の通り」だけだと,無視される。(=記載していないものと扱われる。)(教官談)
4 基本となるのは民法の知識。
法律がわかっていないと疑われる答案は,点数が伸びない。ただし,そんなに高度な知識が求められているわけではない。あくまでも基本知識(=民法の条文,判例,通説(≒我妻説))。
5 原告側・被告側それぞれの戦略
(1)原告側で書くときは,基本的に,請求原因をすべて論証するつもりで書く。請求認容判決の下書きを提供するイメージ。
(2)被告側で書くときは,否認で攻めるのか,抗弁で攻めるのか,を意識して論証する。
6 わかりやすい文章の条件
(1)どこに何が書いてあるのか,読み手が予測可能。
(2)ひとつのまとまりで,ひとつのことを言う。
ア ひとつの段落では,ひとつのトピックを扱う。
イ ひとつの文章では,ひとつのことを言う。
(3)まとまり同士の関係が明らか。
ア 論理の流れがある。
イ 論理の流れが,接続詞で示されている。